No.8ゆきちゃん
私は京都で生まれ育ちました。
場所柄なのか実家のすぐ近くにはお寺がたくさんありその中には墓地もあります。
幼稚園に行く前からゆきちゃんと言うお友達がいました。
彼女はいつも家から最寄の神社の墓地にいて良く一緒に遊びました。
ゆきちゃんは小学校に入る前位の年恰好でした。
おかっぱ頭でレースのついた丸襟とちょうちん袖のブラウスに、モンペ姿で、ちょうど「火垂の墓」のせっちゃんのような感じです。
金切り声でキャッキャッとはしゃぐ姿と、親指をしゃぶる癖が印象的でした。
ゆきちゃんが呼んでいる事を自然と感じ取り、自分からお寺に遊びに行くと嬉しそうな顔をして待っているのです。
ぴょんぴょん飛ぶのが上手で足がとてつもなく速いゆきちゃんに対して、心臓が悪くて活発に動けなかった私はいつも羨ましく思っていたものです。
ある時こんな事もありました。
かくれんぼの鬼になって目を閉じて数を数えていたら、目の前にゆきちゃんの顔だけがどアップで現れました。
びっくりして振り返ると後ろに立っていて、次の瞬間遠くにいました。
家のお手伝いさんが私を迎えに来た時、「誰に話しているの?」と聞かれました。
「ゆきちゃん。」と答えると、しばらく絶句して「おかしな子だねぇ。」と言いました。
私にとっては、その言葉が逆に不思議でたまりませんでした。
ここまでお話すれば、ゆきちゃんは「普通の人」でない事が解りますね。
しかし、私には家族や近所の人と同じように「普通に」見えていましたので、何の不思議もありませんでした。
ゆきちゃんは霊でした。
とても素直な子で「もう帰るね。」と私が言うと「うん。」と返事をし「じゃあね。」と言う頃にはもういませんでした。
ゆきちゃんは戦争でお父さんが亡くなり、働きに行っているお母さんが迎えに来るのをずっと待っていると言いました。
しかし、私はゆきちゃんのお母さんが既に亡くなっている事をなんとなく悟っていました。
今にして思うと、別々に母子亡くなっていたのではないかと思います。
遊び始めた頃は私よりお姉さんだったゆきちゃんは、ずっと変わらないままでした。
ゆきちゃんの年を追い越し、小学校に入学してからは学校の子と遊ぶようになり、次第にゆきちゃんとは遊ばなくなっていったのです。
小学校6年の頃になると、淋しそうな顔をして遠くからこっちを見ていたゆきちゃんを何度も見かけました。
その後、ゆきちゃんとは全く遊ばなくなりました。
学校を出て働き始め一人暮らしをしていた10代終わり頃のある日、ゆきちゃんと再会しました。
枕元に立ったのです。
全く昔のままの年恰好のゆきちゃんは私にこう言いました。
「もう会えないから、言いに来たの。」
「なんで?」と聞いたら「うーん。」といって斜め下を見ました。
その時私は、「人間界に還るんだ」と一瞬で悟ったのです。
当時、私は前世や輪廻転生を知りませんでしたが人は生まれ変わるんだと実感しました。
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